愛犬の避妊去勢手術、いつ頃した方が良いの?そもそもしなくてはいけないの?
子犬を飼ったらまず考えて欲しいことですが、今日はその避妊去勢の適正時期についてのお話です。
避妊去勢手術の目的
意外と、なぜ手術をしなければいけないのかを理解していない飼い主様が多く「みんなやっているからうちも・・・」と動物病院に連れて行くようです。
もちろん避妊去勢手術をすることは望ましいことではあるのですが、可愛い愛犬にメスを入れるのですから、目的をきちんと理解したうえで決断してあげて欲しいと思います。
望まない妊娠・出産が避けられる
動物愛護の観点からも、望まない妊娠・出産は絶対に避けなければいけません。
以前、動物病院でとても珍しい掛け合わせの子犬を連れた方がいらっしゃり、お話をしたことがありました。
「ドッグランにメス犬を連れて行ったら、知らないオス犬に妊娠させられて生まれた子犬なのよ!」・・・と。
人間の場合であれば「そんな男今すぐ死刑にして!」と言いたいところですが、犬の場合は全て飼い主の責任です。
避妊去勢手術は、自分の愛犬だけの問題ではありません。
発情中のメス犬をドッグランに連れて行くのはマナー違反です。発情中はトリミングサロンやペットホテルも受け入れてもらえないことがあるので気を付けてください。
性的ストレスが減る
メスは発情がなくなるため、発情によるストレスがなくなります。
食欲が落ちたり情緒が不安定になるなど、ホルモンバランスの変化がもたらす不調を軽減することができます。
オスには発情期はありませんが、遠く離れた発情中のメスの臭いをも嗅ぎつけ落ち着きがなくなったり、メスの元へ行こうと大騒ぎになります。
飲まず食わずで泣き続けたり、飼い主の言うことを全く聞けなくなったり・・・犬も大変ですが、飼い主や周りの人も大変です。
避妊去勢手術をすることによりそういったストレスから解放されます。
攻撃性の軽減
自然界では強いオスがメスと交配できますので、当然未去勢のオス犬は攻撃的になります。
以前、未去勢のオスのダックスを2頭飼っていたお客様がいらっしゃり、去勢手術をおすすめしていたのですが、不自然な手術はしたくないという方だったので手術はせずにいました。
だんだんと喧嘩が増え、最終的には片方がもう片方の子の足の骨を咬み砕くほどの喧嘩になってしまいました。
そうなってから慌てて手術をしても、劇的な性格の変化は望めない場合が多く、関係の修復が困難になります。
特にオス同士の多頭飼いの場合はかなり危険なことがあります、必ず去勢手術をすることを頭に入れて2頭目を迎えるようにしてください。
病気の予防
子宮や精巣を取り除く手術をするため、それらにまつわる病気は防ぐことができるようになります。
避妊去勢手術で防げる病気
子宮蓄膿症
子宮内に膿が溜まる病気です。他の動物にもみられますが、特に犬に多いと言われています。
避妊手術により子宮を摘出することで予防することができます。
精巣腫瘍
精巣にできる腫瘍です。子宮蓄膿症と同じく、精巣を摘出することで予防できます。
特に精巣が腹腔内留まったままのオス犬(停留精巣・停留睾丸)は、精巣が腫瘍化する確率が高いので、早めの手術をおすすめします。
前立腺肥大
未去勢のオスのシニア期以降に多く発症します。
去勢手術をして男性ホルモンの濃度を下げることで予防効果が期待できます。
乳腺腫瘍
メス犬の500頭に1頭が発症し、そのうちの半分が悪性であると言われています。
避妊手術での予防効果が高いですが、手術の時期によって予防できる確率が変わってきます。
初めての発情前に手術をした場合の発症率は0.05%、1回目の発情のあとでは6~8%、2回目以降では25%。
なるべく早い時期に避妊手術をした方が乳腺腫瘍の確率は下がります。
避妊去勢手術のデメリット
繁殖できなくなる
手術をしてしまえば、子供を産ませることはできなくなります。
麻酔のリスクがある
確率は低いものの、危険性はゼロではありません。
術前の血液検査をして、体調は万全にして手術に望みましょう。
太りやすくなる・毛艶が悪くなる
ホルモンバランスの変化により、体重の増加や、毛艶が悪くなるなどといったことが起こる場合があります。
性格が変わる
性ホルモンの分泌が減ることにより、一般的には穏やかな性格になると言われています。
しかし、手術をしたからといって全頭穏やかになるとは限りません。問題行動が現れてからの手術では、特に期待しない方が良いでしょう。
避妊去勢手術の適正時期
麻酔に耐えられる大きさと体力があるかどうかが基準になりますが、日本ではだいたい生後6か月前後で行われることが多いです。
メスの場合はその頃初めての発情があるので、できればもう少し早い時期での手術が望ましいと思います。
早期不妊去勢手術(early spay and neauter)
早期に手術を行うことによるメリットが多いため、アメリカでは8~16週齢での性成熟前の手術が普及しています。
- 血管が未発達なため出血も少なく、手術時間が短い
- 若いほど回復が早く、体への負担が少ない
- ストレスも年齢が上がるのと共に増大するため、幼いうちの方が精神的負担も少ない
私は自分の愛犬の避妊去勢の際、できるだけ早めの手術をお願いしています。
メスであれば初めての発情よりも早く、オスであればマーキングを覚える前に手術をしたいと考えています。
しかし、「幼いうちは手術が心配」と考える飼い主様にとっては早期の手術は逆にストレスになります。
今後のことを考えて、犬にとっても飼い主にとってもストレスの少ないようにタイミングを見て行いたいですね。
獣医師によっても考えはさまざまです。先生の意見も参考にしながら納得のいく時期を選びましょう。
まとめ:目的を理解し獣医師と事前に相談を
避妊去勢手術、必ずしなければいけないわけではありません。
なんとなく周りがやっているからするのではなく、きちんと目的を理解して手術をする・しないを判断してください。
しかし、ブリーディングはプロのお仕事です。もし愛犬の子供が欲しいと考えた場合でも、繁殖は必ずプロにお任せしましょう。
また同性・異性に関わらず、多頭飼いをする場合には手術をすることを強くおすすめします。
犬を飼ってから考えるのではなく、できれば飼う前にしっかりと決めておいて欲しいと思います。自分の犬だけの問題ではないので、慎重な判断が必要になります。
何のために手術をするのか、どんな効果のために手術をするのか、しっかり理解しておくことが大切です。