狂犬病ワクチン、打つ?打たない?【予防注射】

牙をむいて怒る茶色い犬の写真
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。

平穏な毎日が1日でも早く訪れますように…。

今日はコロナと同じく恐ろしい病気、「狂犬病」のお話です。

狂犬病ワクチンの接種については、勘違いや間違った情報が広まってしまっています。

最低限飼い主様に知っておいて欲しいこと。

狂犬病は致死率100%の恐ろしい伝染病

まずはじめに、狂犬病とはどんな病気なのでしょうか。

症状

  • 発熱
  • 頭痛
  • 倦怠感
  • 筋肉痛
  • 疲労感

といった風邪のような症状から始まり、

  • 興奮や不安状態
  • 錯乱・幻覚
  • 攻撃的状態
  • 水を怖がる

などの脳炎状態になり、最終的には昏睡から呼吸停止で死亡します。

発症すると死亡率は100%です。(これまでに6人だけ生き残った人がいるみたいですが…)

狂犬病は犬だけの病気ではありません

「狂犬」と付きますが、決して犬だけの病気ではありません。

犬以外の哺乳類、そして人間にも感染する「ズーノーシス」、いわゆる「人獣共通感染症」です。

感染経路

ウイルスは唾液に含まれる為、感染動物から噛まれたり引っかかれた傷からウイルスが侵入することで感染します。

また粘膜を舐められることでも感染します。

人から人への感染はこれまで確認されていませんが、患者が精神錯乱になって他の人を噛めば感染してしまうでしょう。

学生時代に勉強した狂犬病のDVDでは、感染した子供がお父さんに掴みかかっているシーンが印象的でした…ので、人から人への感染も十分にありえると思います。

潜伏期間

一般的に潜伏期間は1か月から3か月ですが、1週間未満や1年以上経過してからの発症も確認されています。

咬傷が複数ある、頭部、顔など、脳までの距離が短いと潜伏期間が短くなるそうです。

狂犬病は過去の病気ではない

日本に住んでいるとまるで「過去の病気」のように感じてしまいますが、現在も世界中では毎年5万5千人以上が亡くなっています。

アフリカ、ヨーロッパ、北米・中南米など世界中でみられます。

 

日本は狂犬病洗浄国

とても怖い狂犬病ですが、日本では1950年に狂犬病予防法が施行され、わずか7年で撲滅に成功したそうです。

世界中でまだまだ狂犬病によって亡くなる方が多くいる中、7年という期間で狂犬病を無くした日本人、すごくないですか?

年に一度の愛犬のワクチンがいかに重要かが分かります。

(野犬を徹底的に排除したことも理由のひとつです)

52年ぶりに台湾で発生

2013年、狂犬病洗浄国であった台湾で狂犬病の発生がありました。

台湾は、日本と同じく50年以上狂犬病の発生がなかった国です。

狂犬病に感染した野生のイタチアナグマに咬まれた、ワクチン未接種の幼い子犬が発症し、約3週間後に死亡しました。

野生のイタチアナグマがどこから感染したのかは分かりませんが、これ、日本でも十分ありえますよね。

野生動物の中にまだ狂犬病ウイルスを持った個体がいるかもしれないですし、国外から入ってくる可能性もあります。

犬や猫、あらいぐま、きつね、スカンクなどを輸入する場合、狂犬病ワクチンの2回以上の接種が義務付けられていますが、その他の動物には接種の決まりはありません。

ボリビアでペルー産のペット用ハムスターが狂犬病に感染していることが判明したこともあるそうで、輸入動物が狂犬病にかかっているパターンもあるということです。

今後、日本にいつ狂犬病が入って来てもおかしくないですよね。

日本の狂犬病ワクチンの接種率

世界保健機関(WHO)は「狂犬病の流行を阻止するには70%以上の接種率が必要」としています。

では、日本の飼い犬の狂犬病ワクチンの接種率はどのくらいなのでしょう?

平成30年度の接種率は71.3%、優秀!…ではないのです。

この71.3%という数字、「畜犬登録をした犬のうち、狂犬病ワクチンを接種した犬」の割合なのです。

日本の犬の登録頭数は約600万頭、そのうちの約450万頭ほどがきちんと予防接種をしています。

しかし未登録犬も数多く存在し、推定飼育頭数は1000万頭を超えると言われています。

その未登録犬も考慮すると、日本の犬の狂犬病ワクチンの接種率は50%ほど。

狂犬病の流行を阻止するには70%以上の接種率が必要です、全然足りていませんね。

つまり今日本に狂犬病が入って来てしまったら、流行が防げないということになります。

なぜ犬だけが接種しなければいけないのか

中国では人の狂犬病ワクチンの接種率が高く、年間1500万人分のワクチンが消費されているそうです。

その点日本は犬だけ。(人も打つことはできます)

犬だけに接種しても意味がないのではないか、そもそも日本には狂犬病がないのだから無駄ではないか?

これは簡単に言うと「日本に狂犬病がないから、今のところは犬だけ接種していれば大丈夫」ということだそうです。

世界的に見ても狂犬病蔓延の原因は主に犬ですので、狂犬病洗浄国である日本では、疫学的には犬のみの接種の徹底で大丈夫ということだそうです。

ただし、万が一日本に狂犬病ウイルスが入ってきてしまった場合はその他のペットや家畜、そして人間にも接種が必要になるかもしれません。

愛犬が狂犬病ワクチンを打っていなかったら

もしも愛犬にワクチンを打っていなかったら。

「感染の可能性がありますよー」というお話ではありません。

20万円以下の罰金

畜犬登録、狂犬病ワクチンの接種は法律で定められた義務です。

「犬を飼うなら必ず守ってくださいね」という国とのお約束。

未登録、未接種の犬の飼い主は20万円以下の罰金が科されます。

身の回りで罰則を受けた人はいませんが、警察庁によると2016年の違反事件の検挙数は223件だったそうです。

最悪の場合殺処分に…

中国の村で2019年、9歳児が狂犬病で死亡する事件がありました。

その後その村の犬16頭は殺処分、60頭にワクチン接種がされたそうです。

この殺処分になった犬の条件などは詳しく発表されていませんし、中国でのお話ですが、もし日本で同じように狂犬病が発生したら…。

未登録、未接種の犬は感染の可能性がありますので、日本でも同じような対応になるかもしれません。

狂犬病ワクチンは犬を守るための物ではない

これまで、狂犬病ワクチンは「犬を守る為」の物だと思っていた方もいるのではないでしょうか。

ですがここまででご紹介した通り、狂犬病予防法は「人を守る為」の法律です。

ですので、必要性を感じなくても、副作用が怖くても、必ず接種しなければなりません。義務なので。

なんらかの理由により接種ができない犬は必ず「猶予証」をもらいましょう

高齢、持病があるなどの理由で接種が出来ない場合は、獣医師の判断で接種を猶予することができます。

「獣医師の判断で」なので、外には出ないから、他の犬との接触がないから、などの飼い主の勝手な自己判断で接種をしないという選択はできません。

また持病があっても接種が可能だと獣医師が判断すれば、必ず接種しなければいけませんので気を付けてください。

接種証明書、または猶予証明書のどちらかが必ず必要になります。

狂犬病ワクチンの副反応

「狂犬病ワクチンは打ちたくない!」という飼い主さんの多くは、この副反応が気になっているのだと思います。

どんなワクチンでもそうですが、副反応のないワクチンは存在しません。

では、副反応にはどんな物があるのでしょうか?

こんな症状が出たら要注意

  • 嘔吐・下痢
  • 発熱・消化器疾患
  • 湿疹(蕁麻疹)
  • アナフィラキシーショック

など。

副反応の発生率は高くない

接種後の副反応の発生率は約0.6%。

これは、0.6%の犬が死亡しているのではなく、軽度の物から重度の物まで合わせて、1000頭中6頭副反応が出るということです。

ちなみに人のインフルエンザワクチンの副反応の発生率は20~30%です。

絶対に安全!ではないですが、かなり副反応の出にくいワクチンであるということが分かりますよね。

副反応を最小限に抑えるために

必ず体調が万全な状態で接種するようにしましょう。

  • 嘔吐、下痢がある
  • 発情中や妊娠中
  • 4週齢未満の子犬
  • 元気がない

などといった、気になる症状がある場合は接種を見送りましょう。

基本的には4月1日から6月30日の間が狂犬病予防注射月間となっていますが、体調が優れなかったり月齢が若くて心配な場合は、焦ってその期間に接種しなくても大丈夫です。

狂犬病ワクチンは1年中接種可能です。

期間外の接種の場合でも、証明書を持って窓口(自治体によって異なります)で申請すれば済票を発行してもらえます。

接種のタイミングはかかりつけの先生とよく相談してくださいね。

接種前後は安静に

副反応が出やすいのは接種後30分です。

できれば待合室や動物病院の近くで待機して、様子を観察してください。

注射を打ってすぐクレートに入れて車で帰宅、はちょっと怖いですね。

また、注射の前後にはドッグランやアジリティなどの激しい運動は避けましょう。

帰宅後お留守番になってしまうような日も避けた方が良いです、当日は一緒にのんびり過ごしましょう。

接種後1週間はトリミングもできませんので気を付けてくださいね。

ワクチンの副反応についてはこちらの記事も併せてお読みください。

 

www.inunokoto.com

 

まとめ:狂犬病ワクチン「打たない」という選択肢はありません

狂犬病ワクチン、打ちたくないという飼い主様もいらっしゃるかもしれません。

しかし、現状日本を狂犬病から守る為には「狂犬病予防法」を守るしかないのです。

今後法律の改定があって、接種回数が減ったりすることがあるかもしれません。

でも今は、畜犬登録と毎年の狂犬病ワクチンが義務付けられています。

納得いかないこともあるかもしれませんが、法律です。

またほぼ100%のトリミングサロンで、狂犬病予防注射と混合ワクチンの接種証明書が必要になります。

もちろん私のお店でも必ずお見せいただいています。

沢山の犬をお預かりする責任もありますし、トリマーが自分達自身を守る為でもあります。

狂犬病ワクチンの接種は、自分の犬を守る為だけでなく、家族や社会を守る為にとても大切なことです。

もし周りに「狂犬病のワクチンどうしようかな」と悩んでいる方がいたら「法律だから打たないことはできないよ」と教えてあげてくださいね。

2020年の狂犬病集合注射は延期になっています!

新型コロナウイルスの影響で今年の集合注射はどこの自治体も延期になっています。

詳しい日程は各自治体で確認してくださいね。

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