最近ではペットの高齢化が話題になっています。
「うちの子シニアなんだけどトリミング大丈夫かなぁ…」
「トリミングサロンで断られてしまった」
そんな飼い主様に向けた記事です。
増加するシニア犬とトリミング
人間の世界でも高齢化が問題になっている今、犬達も高齢化が進んでいます。
15年ほど前、アイ〇ルのCMにチワワが出演したのをきっかけに、爆発的なチワワブームが起きたのをご存知の方も多いと思います。
そんなチワワと、ペットブームと共に人気の出たダックスフンド達が、今ちょうどシニアになっているのです。
きっとこれから数年後には、現在人気犬種のトイプードル達がシニア犬のほとんど占めるようになるでしょう。
ドッグフードの進化などにより、犬の寿命が年々伸びていることも、犬の高齢化と大きな関係があります。
最近トリマー仲間との会話で必ずと言っていいほど話題に上がるのが、このシニア犬達のトリミングについて。
トリマーの悩み
- 高齢の子、持病のある子はお断りせざるを得ない
- 飼い主様の理解を得るのが難しい(お断りしなければならない理由など)
- シニア犬をトリミングするリスク(何かあったら怖い)
トリマー達も大切なお客様のわんちゃんを、いつも綺麗に、気持ち良く過ごせるようにお手入れしてあげ、生涯トリミングをしてあげたいと思っています。
担当犬は我が子のように愛しいですから。
しかし、シニア犬のトリミングはかなりのリスクを伴います。正直、何があるか分かりません。
トリミングサロンでは、病院併設の店舗でない限り緊急時の対応が遅れる場合があります。
そのため、高齢になった子に関しては基本的には動物病院でのトリミングをお願いすることになります。
「なんだよそんなの無責任じゃないか!」
と思われるかもしれません。
できればこれまでずっと担当していたトリマーに、最後までトリミングしてもらいたいですよね。
シニア犬のトリミングのリスク
シニア犬の場合は、持病のあることが大多数です。
心臓に疾患を抱えていたり、脳の障害があったり・・・。
トリミングで興奮状態になることが病気の悪化に繋がる可能性も大いに考えられます。
また、当然ですが驚くほど体力が落ちてきます。
お家では「少し寝ている時間が増えたかな?」程度であっても、トリミング時にはかなり辛そうにしている子が多いです。
トリミングは、長い子であれば3時間以上テーブルの上で立ち続けなければなりません。
人間の80歳のおじいちゃんを、何時間も立たせ続けるなんてことはまずしないですよね?
そして最も体力を消耗するのがシャンプーです。
シャンプーが大好き!という子は滅多にいません。
大暴れしてしまう子もいますし、そうでない子もかなりのストレスを感じます。
プールや海で遊んだ際、いつも以上に疲れるという方もいらっしゃると思いますが、「水」は体力を消耗します。
立っているのも辛いようなシニア犬にはかなり過酷なことがお分かりいただけると思います。
またシニア犬はだんだんとストレスに対して敏感に反応するようになってきます。
体の様々な部分に痛みが出てきたり、目が見えなくなったり、耳が遠くなったり・・・。
ひとつひとつの作業に驚きパニックになってしまうことも多く、危険になことが増えてきます。
仕方のない事ですが、
嫌がる→時間がかかる→体力を消耗する→体調を崩す
というのがシニア犬のトリミングです。
あまりにも危険な場合や、ストレスがかかると判断した場合には、その作業は飛ばしたりトリミング自体を中断することもあります。
しかし、お金を頂いている以上はできるだけ綺麗にしてあげたいし、清潔な状態で過ごさせてあげたい・・・というトリマー気持ちもあります。
トリマーも、大切なお客様の愛犬に何かあってはならない、と仕方なく動物病院でのトリミングをおすすめし、自店でのトリミングはお断りするのです。
決して「面倒だから」という気持ちでお断りしている訳ではありませんので、ご理解いただけるとありがたいです。
シニア犬トリミング時の事故事例
動物病院勤務時代のお話です。
シーズー(14歳くらい)
かなりの高齢犬を「獣医師」がシャンプーしていました。
私は別の子のトリミングしていたのですが、突然聞いたこともないような奇声が聞こえ、次の瞬間には先生がビショビショの犬を抱えてトリミング室を出ていきました。
突然呼吸が止まってしまったのです。
その時は素早い蘇生処置により一命をとりとめましたが、これがトリミングサロンだったら・・・と考え震えあがったのを覚えています。
ポーリッシュローランドシープドッグ(16歳)
あまり聞きなれない犬種かもしれません。
ポーリッシュローランドシープドッグは中型の牧羊犬です。
中型犬の16歳はかなりの高齢で、その子は立って歩くのもやっとな状態の子でした。
性格も少し神経質で、病院に来ると不安でいつも大きな声で鳴いてしまいます。
飼い主様が1日お家を空けるとのことでお預かりをお願いされましたが、年齢や性格を考え1度はお断りしました。
しかしどうしてもとのことで、病院での過ごし方やリスクなどを十分にご説明したうえでお預かりしました。
お預かり中はやはり鳴きやまず、かなり体力を消耗したのでしょう。
翌日お家で亡くなりました。
お預かりが全ての原因だった訳ではありませんが、大きな関係があったことは間違いありません。
MIX猫ちゃん(15歳くらい)
お薬がお家で飲ませられず投薬のために通院していた猫ちゃんがいました。
当然ですが病院でも投薬は大変で、2人がかりでかなり強めの保定をしなければ飲ませられない状態でした。
しかし「飲むか、飲まずに死ぬか」というかなり重要なお薬だったため、そこまでしてでも飲んでもらう必要があったのです。
その子は、保定をされ口を大きく開けられた瞬間…そのまま亡くなりました。
別の猫ちゃんですが、注射を打ってキャリーバッグに戻し、気が付いた時には息を引き取っていた、ということもありました。
動物病院には病気の動物が集まるため、トリミングサロンよりは最悪の事態が起こる確率も高いのは仕方のない事です。
しかし、「病院だったから」容体が急変しても何とか助かった命もたくさん見てきました。
その為、私はシニア犬の場合はできれば動物病院でのトリミングが良いと思います。
行き場のないシニア犬
しかしトリミングサロンで断られ、動物病院に行ったら「今までと環境が変わるのは良くありません」とお断りされてしまう、という場合もあります。
確かに、環境の変化は犬にとって大きなストレスになります。
長い時間をかけて築いたトリマーとの信頼関係もあります。
かかりつけの動物病院ではトリミングを行っていなかったり、動物病院であっても新規のシニア犬に関しては受け入れてもらえないことがあり、困ってしまう飼い主様が多いというのも現状です。
その結果、年齢や持病を言わずに新しいサロンに連れて行く・・・という、最悪のパターンになってしまうのです。
でも、そういった場合はどうしたら良いのでしょうか?
私は、これまで担当してきたトリマー・獣医師が、一緒に考えてあげることが必要だと思っています。
「うちの店では一切お受けできません。ごめんなさい。」ではなく、じゃあどうすることが飼い主様と愛犬にとってベター(ベストはないかもしれません)なのか?
愛犬を綺麗にする方法を考える
出張トリミング
トリマーを家に呼び、自宅でトリミングをしてもらう方法です。
環境の変化が少ないため、犬への負担が軽減されますし、飼い主様も近くで見ていられるので安心できます。
全てのトリミングサロンで対応してもらえるわけではありませんが、お願いしてみるのも手です。
大手のチェーン店などでは難しいですが、個人サロンなど融通の利きやすいお店であればやってくれるかもしれません。
しかし、新規でいきなり出張してくださいと言ってもまず受け入れてもらえないので、いつも通っているサロンでお願いしてみてくださいね。
トリミング作業を別日に分散させる
今日は「爪切りなどのお手入れだけ」「シャンプーとブローだけ」「カットだけ」など、通常1日で行う作業を体調を見ながら数日に分けて行います。
すべての工程が1時間以内には終わりますので、ストレスや負担も大幅に軽減されます。
こちらはわりと協力してくれるお店が多いと思います。
短い時間でしたら飼い主様も店内で愛犬の様子を見ながら待機できますので、個人的にはこの方法はおすすめです。
飼い主様が自分でやる
トリマーのようにきれいな仕上がりは難しいですが、シニア犬であればバリカンですっきり短くする方が都合が良い場合も多いですので、どうしてもどこも受け入れてくれない場合は挑戦してみるのも良いかもしれません。
これまでの担当トリマーにやり方を教わりましょう。
大抵のトリマーは快く教えてくれると思いますよ。
電話で予約してしっかり時間をとってもらい、お代を払いゆっくりしっかり教えてもらう方が良いと思います。
また、ドライシャンプーを使うのも良いと思います。
洗い流す必要がないので更に時短にもなり、負担が少なく済みます。
シャンプーの詳しいやり方はこちらの記事をお読みください。
まとめ:シニア犬のトリミングは信頼できるトリミングサロンを探しておくこと
何度も「トリマーに相談しましょう」と書きましたが、若いうちからそういった何でも相談できる、犬のこと、飼い主様のことを一緒に真剣に考えてくれる、信頼できるトリマーを探しておきましょう。
シニアになってから慌てて探しても、なかなかどこも受け入れてくれません。
そして、シニア犬や持病のある子に関しては予約時に必ず申告してください。
トリマーの方から大抵は質問がありますが、もし聞かれなかった場合もきちんと伝えてくださいね。
トリミングはいくつになっても必ず必要です。
愛犬に辛い思いをさせないよう、サロン選びは大切です。早めに行動しましょう!